金田真議員の質問(九月二十日)        2001年9月議会表紙に戻る
【1】二津野ダムの撤去について
金田 今年六月十九日〜二十日にかけ十津川に集中豪雨があり、ダムにたまった濁水が約一ヶ月間熊野川に流れた。そのため新宮漁協では二週間シラス漁ができず、三輪崎漁協も五日間漁ができず、また新宮市の上水道も対策に追われた。今年八月二十一日の台風十一号による出水でも大量の濁水が発生し、水道水が濁るなど、瀞観光やアユ漁など観光や自然環境分野にも相変わらず悪影響を及ぼしている。現在、十一のダムと九つの発電所(西吉野を除く)が造られ、四十年以上も経過している。新宮市水道事業所の熊野川取水口での濁りを調べる濁度調査によれば、ダム建設以前は濁度ゼロの月が毎年記録されたのに、昭和三十三年十津川の風屋ダム工事以後は濁水が急速に増え始め、昭和三十七年以降は濁度ゼロの月が完全になくなった。
 昭和五十三年には、国をはじめとする関係機関により新宮川水質汚濁対策連絡協議会が発足し、汚濁軽減の調査研究と対策を行ったが、抜本的な解決に至っていない。十津川水系は地質が悪い上に明治二十二年の大水害の後遺症もあり、昔から濁水は流れたがすぐに元の清流に戻った。従って濁水が長期化するのはダムが原因であり、こんな地質の場所にダムを造ったのが間違いだったのではないか。電源開発も「ダムがある限り濁水は不可避。いかに軽減するかが課題」と言っており、ダムを撤去しない限り濁水は永遠に続くことになる。
 現在、熊野川水系の九つの発電所の最大発電出力は百八十五万キロhで、その内奥吉野発電所の百二十万キロhを除く八つの発電所の合計六十五万キロhは、現在の火力発電所百万キロhの一基にも及ばない。特に二津野ダムはわずか五万八千キロhと小規模で、ダム湖も小さく、利用水深も五メートルと浅いので濁水軽減機能をもっていない。現在の日本の電力事情からすれば二津野ダムの発電を停止しても支障はなく、また水力発電が二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーであっても、それ以上の濁水などの環境破壊をもたらしているのだから、その発電を目的とした歴史的使命は、もはや終わったと考えるべきだ。今も二津野ダムから送られてきた濁水が、熊野川椋呂の十津川第二発電所の発電に使われた後、放流されるため、本流の清流と発電放流の濁水がハッキリと見分けがつき、本流の清流が濁水に飲み込まれ熊野川が濁流に変わる。
 根本的な濁水解消の第一歩として、二津野ダムの撤去あるいは発電停止を国や電源開発に訴えていただきたい。
 ■木村知事 今後、最終的には発電中止、ダム廃止等ということになるが、すぐにというわけにもいかないので、選択取水など様々な方法も考慮しつつ、近々、県の幹部を電源開発に派遣し、この問題に対し地元の要望や意向がいかに強いかということを示していきたい。

【2】自然と健康を守る環境行政の実現について
一. 新宮市松山の産廃問題について
金田 新宮市松山の産廃問題について。今まで廃掃法に基づく産業廃棄物管理票や委託契約書の提出を求めても応じなかったが、今回管理型処分場で処理が必要な廃棄物の管理票は全て提出されたのか。廃棄物保管について、焼却灰を詰めた大量のドラム缶が長期間放置されているが、適切な保管なのか。また、廃棄物置き場の床面にシートまたはコンクリートの処置は行われたのか。里道が無断で埋め立てられ使用されているのに、なぜ放置しているのか。
 ■秋月環境生活部長 平成十三年八月二十四日に事業者から新宮保健所長に対し、平成十一年度及び平成十二年度の管理票等の写しが提出された。うち、管理型廃棄物である石膏ボードに係る管理票についても調査中であり、廃棄物の量及び受け入れ先等について関係者に確認をしていきたい。事業者から平成十年十一月から平成十三年八月までの間、事業場内でドラム缶容器に詰めて保管しているとの報告を受けており、飛散流出のおそれはないものの、長期間の保存は廃棄物の適正処理の観点から望ましくないため、適切な処理業者に処理を委託するよう指導している。保管基準では地下水を汚染させるおそれがある場合は、床面等の浸透防止を図ることとされているが、現在保管しているのは木くず、廃プラスチック類等であり、地下水を汚染させるおそれがないものと判断しており、今後、燃え殻等の地下水を汚染させる廃棄物を保管する場合は、浸透防止を図るよう指導していきたい。
 ■大山土木部長 里道を無断で埋め立て使用することは、国有財産の適正な管理に違反する行為である。この行為を知った時点から、この者に対し、境界明示と払い下げまたは付け替えの手続きを行うよう継続的に指導し、適切な財産管理に努める。

二. 新宮市営球場の予定地の環境対策について
金田 新宮市営球場のダイオキシン再調査と浚渫土砂の処分についてであるが、今年一月に県土地開発公社所有の球場予定地のダイオキシン土壌調査が実施されたが、二万六千平方bの広い場所で、埋め立てられた物質も場所も特定せず、たった二地点だけの調査結果では住民の安心が得られないとダイオキシン再調査を依頼したがどうなっているのか。同じ敷地内の河川浚渫土砂九千八百立方bを野球場に敷きならす際に、その浚渫土砂には、様々なゴミや廃棄物が混ざっており、それらを完全に取り除くことも依頼したがその後どうなったのか。また、今後どのようなかたちで新宮市の事業計画に協力していくのか。
 ■大山土木部長 土壌追加調査の結果、重金属類、ダイオキシンとも環境基準を満足しており、安全であると確認した。浚渫土砂以外の処理については、分別等により適切に処理した。野球場予定地の整地については、野球場建設の主体である新宮市と協議していく。

【3】七川ダム操作について
一. ダム操作の疑問点
金田 七川ダムの最低水位は九五メートルであり、予備放水量水位の最低水位は一〇三.四メートルだが、コンジットゲートからの放流で八八メートルまで水位をさげることは技術的には可能であるのに、一〇三.四メートル以下にするための事前放流ができないのは、操作規則があるからなのか。また、ダムの満潮時に大量放流を行っているが、今回の洪水調整計画はどのようなものだったのか。
 ■大山土木部長 操作規定に基づき実施している。今回のダム操作により、最大毎秒一二七二立方メートルの洪水を約半分に調節した。事前放流については、今回の事前水位が一〇〇.二メートルであり、操作規定で定めた予備放流水位一〇三.四メートルよりも低い状態だったため行わなかった。仮に放流する時期を満潮時より早めた場合には、今回よりも最大放流量を多くせざるを得なかったと考えている。

二. 操作規則の見直しについて
金田 これまでにも内部で操作規則の見直しの必要との意見もありながら、昭和四十五年に規則が定められてから、操作規則の見直しをなぜ行わなかったのか。
 椿山ダムの洪水期間は六月十六日から十月十五日まで、七川ダムの洪水期間は七月一日から九月三十日と他のダムと比べても短いが、なぜか。また同様に、洪水調整は一〇三.四メートルからの治水容量二千万トンで行うより、少しでも最低水位九五メートルに近づけて治水容量を増やすことのほうが、発電よりも生命・財産を優先させる姿勢ではないか。
 ■大山土木部長 今後、よりよい操作を目指して、洪水前の放流等も含め、企業局や町と連携し、操作規則の見直しについて検討していきたい。

三. 地元の意見を反映するシステムについて
金田 私どもの調査では、洪水調整のための事前放流は住民の理解と納得は十分得られたし、十分可能だったと考えられる。今後は訓練だけでなく、関係機関との連絡会等を常設しダム操作規則の見直しなどの協議、洪水時に地元の意見が反映できるシステムづくりが大切なのではないか。
 ■大山土木部長 地元からも「予備放流水位の見直しができないのか」等の要望を聞いているので、町と連携しつつ、検討していきたい。

四. 河川改修計画について
金田 雨の降り始めの二十一日午前六時時点の空容量は二二〇八万トンであったのが、午後六時時点では一九一万トンと危険な状態になっている。結局、ダムの流入量のピークを迎えた午後五時前には、ダムはほぼ満水状態になっており、それ以上は調整規則どおりの調整ができなくなった。確かに今回のダムの流入量は毎秒一二七二トンと大きなものであったが、かといってダムの基本計画では毎秒一三八〇トンもの流入量を調整できることになっているから、予想の範囲内だ。しかし現実には計画の三二〇トンの放流の倍近い六二七トンの放流を行っている。この点からも、事前放流により空容量を多くすることは必要であり、もうひとつは、放流量の設定などは洪水に対する七川ダムの能力を過大評価したものではないかと思われ、その点も補える河川改修計画が必要であると考える。
 ■大山土木部長 今回の災害の実態をふまえ、策定していきたい。

【4】市町村合併について
一. 合併特例債と合併バブル
金田 合併をすすめる要因のひとつに、厳しい状態にある地方財政が挙げられているが、国は合併推進のために、莫大な建設事業を市町村に大盤振る舞いする。これは財政の歪みをもたらす。例えば和歌山市を除く和歌山県の市町村の合併特例債を試算すれば、十年間で約三千五百億円となり、一年間に三百五十億円の事業が通常の建設業に上乗せされ、十年間の平均の建設事業が三五%増しになる。新宮の一市四町一村の組み合わせで試算すれば、約四〇%増しの一.四倍の建設事業となる。これでは、合併による財産再建とは裏腹に合併バブルによる財政のさらなる悪化につながるのではないか。
 ■木村知事 一面、短期的には起債を起こしてしまう。ただ、この市町村合併は長期的に合併することにより、行政コストの効率化を図るということを目指しているので、更にその先にある大きなコスト縮減という観点から措置をとるのである。

二. 合併支援地域の指定 
金田 合併の大前提は、市町村の自主性を前提としたものだが、県の合併重点支援地域の指定はその自主性を損なうことにならないのか。今年の十二月までには指定の計画だということで、各市町村に打診して約三カ月ほどの間に、果たして自主性に基づく対応は可能なのか。また、市町村の意向とは、首長の意向か、議会の意思も含むのか、住民説明会などの情報公開をした後の意向なのか。自主性を前提の支援地域の指定とは、如何なる手続きと期間、どの程度の意思決定が必要だと考えているのか。
 ■稲山総務部長 市町村における意見集約については、各市町村ごとに判断いただくのだが、一般的には市町村長が議会などと相談しながら回答することが多い。回答期限は必要とされる期間等を勘案しつつ検討していきたい。

三. 龍神村での合併問題講演会について
金田 今月三日に開かれた「合併問題講演会」で、県職員が龍神村の人口は四六三四人から、二〇二五年には二六〇〇人に減るとの推計を示し、「こうならない間に若年人口を増やすことだがその一つの方法が合併」と述べたそうだが、合併することで若年人口が増えるという根拠は何なのか。また、「龍神村の予算の状況」というグラフを配布し、歳入では、村民税と地方消費税交付金が二倍になり、反対に地方交付税が半分になるという仮定を示したそうだが、如何なる根拠からか。参加者から、将来はこうなるという脅しではないかとの批判がある。合併は住民自治の問題だから、住民が正確な情報で、メリットもデメリットも正しく評価できる材料を提供することが必要である。住民に示した材料は正確ではない。反省を求める。
 ■稲山総務部長 若年人口の割合が高い市町村と合併すれば、若年人口率は同村の現在の数値よりも高くなるというのが根拠だ。市町村合併と交付税の見直しは別のもので、合併しなかったから交付税を減じるという関係にはならない。配布資料に示した交付税の二分の一という数値は、分かりやすい例としてあくまでも仮定の数値だという説明もおこない、またいろいろ別の数字を置いて、財政面からの検討もしてほしいと注意を行った。市町村合併の取り組みについては、適切かつ具体的な情報の提供に努めたい。

【5】紀宝町に架橋を要望する
金田 必要な公共事業は大いに推進すべきとの立場から、熊野川に新たな橋を架けることを提案する。熊野川には国道四二号の新宮市内の熊野大橋から国道一六八号の熊野川町日足の三和大橋までの約二〇キロメートルの間、橋がない。現在の旧熊野大橋は昭和十年に架けられた橋で老朽化している。新熊野大橋が災害などにより使用できなくなれば、交通が遮断され、近くに迂回路すらないでは大変な事態になる。新たな橋が架かれば、車の流れが分散し、渋滞が緩和されるだけでなく、熊野大橋のバイパスや迂回路としての役割を果たせる。特に紀宝町の住民は、今回の台風被害から防災対策の面からもその必要性を訴えており、県境に架ける橋なので、和歌山県は機敏に対応し、協力してことに当たるべきだ。調査研究をし、次期に前向きの答弁を頂けることを要望する。

【再質問】
○熊野川の濁水問題について。
金田 昭和五十二年十月十六日、新宮市議らが県庁を訪れ、二津野ダムの撤去や発電停止について当時の下川県議長と一緒に、知事など県幹部と会談した。まさに昭和五十二年当時からの問題だったことを十分認識していただきたい。是非、発電停止、よろしくお願いします。(要望)

○合併の支援地域の指定について。
金田 いつまでにそれを決めるかというのは各自治体、市町村で決めたらいいということなのか、確認しておく。龍神の講演会について、資料の真意が伝わらず、根拠のない数字を示したから混乱した。根拠のない数字をだすのはやめていただきたい。
 ■稲山総務部長 市町村合併は市町村が自主的にみずからの将来の展望にたち判断するものだ。重点支援地域の指定に当たっての市町村からの回答も、市町村それぞれの判断によるべきものだ。

金田 ○松山の産廃問題について。以前にもここの問題、ちょうど同じ場所、県の土地を無断使用していることで議場でとりあげ、直ちにそれをやめさせた。そのように今回も適切、敏速にかつ住民も納得出来るような形で作業を行うことを要望する。(要望)

金田 ○七川ダムについて。一つ目の質問は、一〇三.四メートル以下になぜできないのか、それは規則があるからですか、こう聞いている。そうかそうでないか、はっきり言えばいい。以前は事前放流をしたのになぜ今回はしなかったのか、という住民の疑問に答えたいから聞いている。三つ目の質問は、これまで内部で操作規則の見直しが必要という意見があったのに、昭和四十五年からなぜ見直されていないのか、と聞かれたから、教えて欲しいのだ。それから、ダムの洪水期間。他のところは長いのになぜ七川ダムだけ短いのか、と聞かれたら県はそれに答える義務がある。一〇三メートルの水位にするよりも九五メートルに下げた方が、発電優先ではなく生命・財産優先になるのではないか、という質問にも答えていない。二つ目の質問、満潮時に大量放流を行ったことについて、今回の洪水の調節の計画、予想はどうだったのか、十分事前に予想して立てていたのか。明確な回答をいただきたい。
 ■大山土木部長 今回の事前の水位が一〇〇.二メートルで、操作規則で定めた予備放流水位一〇三.四メートルよりも低い状態だったので事前放流は行わなかった。満潮と放流との関連は、仮に放流時期を満潮よりも早めた場合には今回よりも最大放流量を多くせざるをえなかった。操作規則の見直しの件については、今後、よりよい操作を目指し町と連携しながら検討していく。洪水期間については、流域の特性等を考慮して定めており、水系により異なるのが一般的だ。

【再々質問】
金田 国から出ているダム管理のマニュアルには予定の流入量、放水量を書く欄があるが、和歌山県のものにはない。これでどのように予想、計画をたてたのか疑問だ。ダムを過大評価せず、住民が安心して暮らせるようにぜひ対策を講じていただきたい。(要望)

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